自分自身を見つめなおす
毎年、お盆とお彼岸にはお墓まいりをする、という人は少なくありません。
お墓には、私たちの先祖が眠っています。ですから、お墓参りに行くと、どんな人でも神妙な気持ちになります。
目には見えませんが、そこでは亡き両親や親族、あるいは友人との出会いがあり、合掌し、祈りを込めることで、亡くなった人たちとの会話がなされます。先祖の霊と私たちがどこかで結びつくのでしょう。
お墓まいりは、ある意味で、自分自身を見つめなおす機会であり、私たちが失いつつある人情、心のふれあいを感じる場所にもなっています。日本人にとって、昔からお墓は心の故郷という気持ちが強いのかもしれません。
先祖供養は日本独自のもの
こうした日本の「先祖供養」はどのようにしてできたのでしょうか。
死者をうやまい葬る方法は、時代や地域によってさまざまでした。今日のような日本の先祖供養は、わが国独自のものです。仏教と儒教、それに我が国独自の習慣がむすびついたもので、長い年月の間に洗練され、今日のような儀式になったのです。
先祖供養の「供養」とは、もともと仏教の教えのひとつですが、インド仏教では、釈迦の遺骨(仏舎利)とそのお墓(ストゥーパ=卒塔婆)への供養を中心としていました。人々はその供養をかさねて功徳を積み、それを亡き父母へさしむける(回向)ことが大事とされたのです。
ところが、中国仏教になると、直接、先祖や亡き父母を霊廟でまつる儒教の「先祖祭祀」の考えがとりいれられます。中国では、古来より先祖をうやまい祀るという儀式が大切にされてきたためで、それがそのまま日本に伝えられたのです。
日本で「供養」といえば、「仏や死者の霊にものを供えたり、経を読んだりして慰め、冥福を祈ること」とされています。
お墓詣りのとき、お墓の掃除のほかに、線香やお花、経本などをお供え物として捧げるのはそのためです。
また、各家庭にある仏壇には、本尊(仏さま)がまつられ、先祖の位牌や浄土真宗のように法名軸もまつります。これは儒教の「霊廟」とインド仏教の釈迦(仏さま)への供養が一緒になったものです。
さらに、お墓まいりで先祖に供養するという習慣も、インドのストゥーパ(卒塔婆)供養と、中国の先祖供養(祭祀)が結びついたものです。
こうして日本の先祖供養は、ほかの仏教国ではみられない独特のものとなっています。
正しいお墓の作り方